文章修行

文章修行のためにあれこれと書いていくブログです

ロシア人はどうして戦争を支持するのか

市井で生きているロシア人、およそ50人に、ウクライナの戦争についてどう考えているのかを、インタビューした記事を読んだ。

 

meduza.io

 

機械翻訳を通して読んだので、よく理解できていない部分もあるが、読み取れた部分を元にして、以下の文章を書いていく。

 

戦争に賛成している人が多い

この戦争を始めたプーチンへの支持率は、80%にも達しているとされているが、実際、このインタビューでもほとんどの人が賛成の意を表明していた。

 

ウクライナにはファシストがいてナチズムが蔓延しており、だからそれを攻撃するのは正しいのだという、プーチン政権によってなされているプロパガンダをそのまま唱える人が多く、それによって、本来感じるべき罪悪感が押し隠されているようだ。

 

インタビューの対象者には退役軍人や、アフガニスタンの戦争に従軍した元兵士の話なども含まれていた。

 

こういった人たちは軍事の経験や知識があるので、ウクライナで行われている一般市民への攻撃という、悲惨な事態を正確に理解しているのだが、それでも戦争自体には賛成なのだと答える。

 

この記事を書いたジャーナリストは、インタビューに答えた人たちは、みな多かれ少なかれ、矛盾した発言を平然としていることに気がつく。

 

理性ではウクライナへの攻撃はおかしいと理解していても、恐怖や不安などにとらわれ、戦争に賛成する姿勢を取らざるを得なくなっているのではないかと分析している。

 

西洋への恐怖感

その恐怖はどこから生まれるのかというと、西洋諸国に対する恐怖感が根底にあるようだ。

 

日本人からすると、アメリカやEU諸国は、ここ数十年にわたって敵対したことのない相手であり、対等に見られているかは、相当に怪しいところはあるものの、基本的には味方なのだと言える。

 

彼らは世界で最高水準の国力を備えている国々であり、それらが連合していることによって、他の地域は彼らの風下に置かれている。

 

そしてロシアは、かつて西洋諸国と敵対していたソビエト連邦だった国であり、一度は西洋諸国との競争に敗れ、国家が崩壊したこともあった。

それは30年前のことで、ゆえにその時の苦難を体験し、覚えている人はロシアに大勢いる。

 

そして現代においても、欧米諸国が結成するNATOという軍事防衛同盟は拡大の一途を続けており、その領域はロシアとの国境へと、どんどんと迫ってきていた。

 

そういった状況下において、プーチンだけでなく、ロシアの一般市民が西洋諸国を脅威と感じ、自分たちがそれによっていずれは潰されてしまうのではないかという、恐怖感を抱くようになっていった。

 

また、長年にわたってプーチン政権はそのようなプロパガンダを展開し、ロシア人の精神に植えつけていった、という側面もあるようだ。

 

ロシアは資源価格の低迷や、出生率の低下といった要因によって、経済的な活力を失ってきており、そのあたりもロシアの社会に暗い影を落としている。

 

そのような背景があったことで、思い切って戦争を仕掛けたことによって、閉塞感が打破されるのではないかと、期待を持っている人たちもいるようだ。

 

しばらくすればロシアが世界を支配するようになる、といった誇大妄想を語る人も登場する。

 

戦争をして西洋諸国に勝利すれば、ロシアに栄光がもたらされ、自分たちをおおう重苦しい感情は消え去るのではないか。

そのような期待感が、戦争への支持につながっている面があるようだ。

 

冷静に考えると、ロシアはウクライナへの攻撃の初動に失敗しており、その後も苦戦を続けて損害を拡大させ、軍事力や経済力を喪失していく状態が続いている。

 

このまま行けば、ロシアにもたらされるのは、混乱と没落だろう。

 

しかしそれでも、戦争が起こったことによって何かが変わるのではないかという期待感は、今のところ冷めていないようだ。

 

これはおそらく、戦争が始まってまだ2ヶ月ほどで、経済制裁による影響が深刻になっていないから、という面もあると思われる。

 

いまは強大な西洋諸国に挑戦するロシア、という構図に酔っていられやすくなっているのだろう。

 

あるいはこの状況は、太平洋戦争が始まった時の日本に似ているかもしれない。

 

最終的には日本はアメリカに無残な敗北を喫するが、戦争が始まった時には、歓喜した人が大勢いたそうだ。

 

同調圧力と無力感

その他には、同調圧力が戦争への賛成意見を述べさせている、という側面もあるようだ。

 

自分の属しているコミュニティーの、多くの人間が「戦争に賛成だ」と述べていれば、今後もそのコミュニティーで生きていくためには「私も戦争に賛成している」と言わざるを得なくなる。

そのような状況があることも描かれていた。

 

また一方で、「あなた方は表現の自由が大事だと言うが、それによって本当に社会が良くなるとは思えない」と、あきらめの意見を述べる人もいた。

 

こういったものは「学習性無力感」と呼ばれるらしいが、ロシアでは、表現の自由言論の自由といったものが確立されたことがなく、政府によって弾圧され、押しつぶされるという歴史が展開されてきた。

それが続くことによって、表現の自由言論の自由などを求めても仕方がないと、あきらめる人が増えてしまったようだ。

 

ロシアは大統領と、その側近や仲間たちが大きな権力と財力を握っている社会で、一般人との格差は非常に大きくなっている。

 

ゆえに、一般市民が国の政治に影響を及ぼす事は不可能で、このために政府が主張することと別の意見を持ったとしても、現実に何も変えることができないという、無力感にとらわれがちになる。

 

その結果として、ロシア人たちは慢性的に無力感にさいなまれるようになり、政府のプロパガンダをそのままうのみにして同化した方が、ロシア国内においては迫害されることがなくなり、精神的な圧迫を感じる必要もなくなるので、同調するしかなくなっている、ということもあるようだ。

 

不幸なロシア人

インタビュー全体を読んで、ロシア人は不幸な境遇に置かれているのだな、と感じた。

 

不幸な境遇に置かれ、恐怖や不安にさいなまれている人々は、自分の力で冷静に物事を見て判断するのが難しくなる。

 

私は日本で暮らしている。

ここでは治安が安定しているし、衰微してきているとはいえまだ経済力があるし、明日にでも急に生命が脅かされる事態になる可能性は、かなり低い。

 

だから落ち着いて情報を集めてから、この戦争はロシアが悪く、今すぐにでも戦争を止めた方が、ロシアにとっても最終的には得になるのではないかと思うのだが、当のロシアの人たちは、そういったことを落ち着いて冷静に考えることができるような環境が、与えられていないのではないかと思えた。

 

この戦争が発生したのは、プーチンの錯誤によるところが大きいと思うが、一方においては、多くのロシア人が貧しかったり不幸だったり、不安にさいなまれたりするような状況に置かれており、それゆえにプーチンが独裁的な権限を振るって、国民全体を戦争へと引きずっていく事が可能になったのでないかとも思われる。

 

ロシア人は強権への抵抗力が弱く、引きずっていかれやすい境遇に置かれているのだ。

 

人が誰しも貧しさに苦しむことなく、ある程度の安定と平和を得て暮らせるような状況を作るのは、大きく言えば、世界を平和にする上において欠かせない条件なのだろう。

 

どこかで誰かが不幸になっていれば、やがてそれが原因となって騒乱が引き起こされ、その影響は海や山を隔てた遠い国へも波及していき、結局は全員がある程度、不幸になってしまうのかもしれない。

 

私たちの身にも、安全保障に対する不安や、インフレによる生活のしづらさという形になって、すでに具体的にふりかかってきている。

 

これはしばらくの間、悪化することはあっても、改善されることはないだろう。